地震後、一度避難した建物に戻っても大丈夫?安全確認前に戻ってはいけない理由
大きな地震が発生して建物の外へ避難したあと、「財布を忘れた」「スマートフォンを取りたい」「車の鍵を取ってきたい」などの理由で、建物の中へ戻りたくなることがあります。
しかし、地震後の建物は外から見ただけでは安全かどうか判断できない場合があります。
最初の揺れに耐えた建物でも、柱や壁、天井、設備などが損傷していたり、ガス漏れや電気配線の異常が発生していたりする可能性があります。
さらに余震によって、最初の地震では落ちなかった天井材や家具が落下したり、建物の損傷が拡大したりすることもあります。
この記事では、地震後に一度避難した建物へ自己判断で戻ることが危険な理由と、再び建物へ入る前に確認したいポイントを解説します。
地震後、一度避難した建物へすぐ戻ってはいけない理由
地震後に建物から避難した場合、重要なのは「揺れが止まった=建物が安全になった」わけではないということです。
大きな揺れを受けた建物では、目に見えない部分を含めて損傷している可能性があります。
また、建物そのものが無事でも、内部では次のような危険が発生している場合があります。
- 柱・壁・天井などの損傷
- 家具や什器の転倒
- 天井材や照明器具の落下
- 割れたガラスの飛散
- ガス漏れ
- 電気配線や家電製品の損傷
- 水道管や給排水設備の破損
- 火災や煙の発生
一度安全な場所まで避難できたのであれば、忘れ物などを取りに戻るためだけに危険な建物へ入り直すことは避けましょう。
最初の地震で倒れなくても余震で危険になることがある
大きな地震のあとには余震が発生することがあります。
最初の揺れによって建物や家具などがすでにダメージを受けている場合、次の揺れが比較的小さくても被害が拡大する可能性があります。
例えば、最初の地震では落下しなかった天井材や照明器具が余震で落ちたり、傾いていた家具が倒れたりすることがあります。
建物の壁や柱などに損傷がある場合は、余震によってさらに状態が悪化する可能性もあります。
そのため、地震直後は「大きな揺れは終わったから大丈夫」と判断せず、しばらくは余震を想定した行動が必要です。
外から建物を確認するときの危険なサイン
避難後、建物に次のような異常が見られる場合は、不用意に近づいたり中へ入ったりしないでください。
- 建物全体が傾いている
- 柱や壁に大きな亀裂がある
- 外壁やタイルが剥がれそうになっている
- 窓ガラスが割れている
- 屋根瓦や看板などが落下しそうになっている
- ドアや窓枠が大きく変形している
- 建物から煙が出ている
- ガスのような臭いがする
- 異常な音がする
特に外壁、窓ガラス、看板などは余震によって落下する可能性があります。
建物の安全を確認するときも、外壁のすぐそばではなく、落下物の危険が少ない場所から確認することが重要です。
ガス臭がしたら絶対に火や電気のスイッチを使わない
地震によってガス管やガス機器、接続部分などが損傷すると、ガス漏れが発生する可能性があります。
ガスの臭いを感じた場合は、建物へ入らないことが基本です。
また、ガスが漏れている可能性がある場所では、次のような行動は避けてください。
- ライターやマッチに火をつける
- タバコを吸う
- 照明のスイッチを操作する
- 換気扇のスイッチを入れる
- コンセントを抜き差しする
- その他、火花が発生する可能性のある操作をする
電気のスイッチを操作した際に発生する小さな火花でも、条件によってはガスへ引火する危険があります。
ガス漏れが疑われる場合は安全な場所へ離れ、ガス事業者や消防など適切な機関へ連絡してください。
停電していても電気設備が安全とは限らない
地震後に停電している場合、「電気が来ていないから電気設備は安全」と考えてしまいがちです。
しかし、停電中でも電源コードやコンセント、家電製品などが地震によって損傷している可能性があります。
さらに停電が復旧すると、傷ついた配線や転倒した家電に再び電気が流れ、ショートや発熱、火災につながる可能性があります。
これが地震後に注意したい通電火災です。
建物から避難するとき、安全に操作できる状況であれば主幹ブレーカーを切ってから避難することも通電火災対策になります。
ただし、津波や火災、建物倒壊など差し迫った危険がある場合は、ブレーカー操作のために避難を遅らせてはいけません。
店舗・商業施設では勝手に建物へ戻らない
ショッピングモール、スーパー、飲食店、オフィス、ホテルなどで地震が発生し、一度屋外へ避難した場合は、特に自己判断で建物へ戻らないようにしましょう。
大規模な施設には、家庭にはないさまざまな設備があります。
- 都市ガス・LPガス設備
- 厨房設備
- 大型電気設備
- 空調設備
- 非常用発電設備
- 給排水設備
- エレベーター
- スプリンクラーなどの消防設備
建物自体に大きな損傷が見えなくても、こうした設備に異常が発生している可能性があります。
施設側から避難を指示された場合は、施設管理者や消防などによる確認が終わり、再入場の案内が出るまで待ってください。
財布や買い物袋、荷物などを残していたとしても、自己判断で取りに戻ることは避けましょう。
エレベーターは安全確認前に使用しない
地震後に建物へ戻ることが認められた場合でも、エレベーターがすぐに使用できるとは限りません。
地震によってエレベーターが停止したり、設備点検が必要になったりすることがあります。
一見正常に動いているように見えても、その後の余震や設備異常によって停止する可能性があります。
施設側から使用可能との案内が出るまでは、エレベーターを使用しないようにしましょう。
「応急危険度判定」が行われる場合もある
大規模な地震によって多くの建物が被害を受けた地域では、余震による二次災害を防ぐために被災建築物応急危険度判定が行われることがあります。
これは、地震で被災した建物について、余震などによる倒壊や部材の落下などの危険性を応急的に確認するものです。
判定結果は一般に、次のような表示で建物に掲示されます。
- 危険:建物への立ち入りが危険と判断されている
- 要注意:立ち入りなどに十分な注意が必要
- 調査済:応急的な調査の結果、危険性が比較的低い
ただし、「調査済」であっても建物が完全に無傷であることや、今後も絶対に安全であることを保証するものではありません。
掲示内容や自治体などの案内に従って行動してください。
津波の危険がある地域では絶対に取りに戻らない
海岸や河口付近など津波の危険がある場所では、建物への再入場以前に津波から離れることが最優先です。
一度高い場所や安全な避難場所へ避難したあと、忘れ物や車などを取りに戻ることは非常に危険です。
津波は一度だけとは限らず、後から到達する波の方が高くなる場合もあります。
津波警報や避難指示などが出ている間は、安全な場所から戻らず、気象庁や自治体などの情報に従ってください。
忘れ物よりも命を優先する
地震後に一度避難すると、建物の中に残したものが気になることがあります。
- 財布
- スマートフォン
- 現金
- 薬
- 車や自宅の鍵
- 仕事上の重要書類
- ペット用品
どれも生活上重要なものですが、建物に危険がある可能性が残っている状態で取りに戻ることは避けるべきです。
特に「ほんの1分だけだから」「入口の近くだから」と考えて戻ると、その間に余震が発生する可能性もあります。
物は後から回収できますが、命を危険にさらしてまで取りに戻る必要はありません。
では、いつ建物へ戻ってよい?
再入場できるかどうかは、建物の種類や被害状況によって異なります。
店舗や商業施設、会社、公共施設などでは、施設管理者や消防、自治体などから再入場可能との案内が出るまで待ちましょう。
自宅の場合でも、明らかな損傷やガス臭、煙などの異常がある場合は自己判断で入らず、必要に応じて専門家や関係機関へ確認してください。
再び建物へ入る際には、少なくとも次の点を確認します。
- 大きな余震が続いていないか
- 建物に著しい傾きや大きな亀裂がないか
- 外壁や窓などに落下の危険がないか
- 煙や火災が発生していないか
- ガス臭がしないか
- 水漏れなどが発生していないか
- 立入禁止などの表示がないか
- 施設管理者などから再入場が認められているか
再入場するときも余震を想定する
建物へ戻れる状態になった場合でも、地震前と同じ感覚で行動しないことが重要です。
床には割れたガラスや落下物などが残っている可能性があります。
また、家具や棚などが不安定になっている場合もあります。
再入場するときは、次のような点にも注意しましょう。
- 靴を履いて足を保護する
- 懐中電灯を持つ
- 頭上の落下物に注意する
- 傾いた家具や棚に近づかない
- ガスや電気設備に異常がないか確認する
- すぐに避難できる経路を確保しておく
余震を感じた場合は、無理に荷物を持ち出そうとせず、再び安全確保を優先してください。
地震後の再入場チェックリスト
| 確認すること | 判断 |
|---|---|
| 津波警報・避難指示が出ている | 戻らない |
| 建物が傾いている・大きな亀裂がある | 戻らない |
| ガス臭・煙・火災がある | 戻らない |
| 外壁やガラスが落下しそう | 近づかない |
| 立入禁止・「危険」の表示がある | 戻らない |
| 商業施設から避難を指示された | 再入場の案内を待つ |
| エレベーターの安全確認ができていない | 使用しない |
| 安全確認が済み再入場が認められた | 余震・落下物などに注意して入る |
普段から「取りに戻らなくてよい準備」をしておく
地震後に危険な建物へ戻ってしまう理由の一つが、必要なものを建物内に残してしまうことです。
そこで普段から、避難時にすぐ持ち出せる場所へ最低限の防災用品をまとめておくと安心です。
- スマートフォン
- モバイルバッテリー
- 懐中電灯
- 常用薬
- 最低限の現金
- 身分証明書など必要なもの
- 飲料水
- 携帯ラジオ
非常用持ち出し袋も、押し入れの奥ではなく、玄関付近など安全に持ち出しやすい場所へ置いておくことが大切です。
まとめ|「一度避難した」という判断を無駄にしない
大きな地震が発生して建物から避難した場合、揺れが収まったからといってすぐに中へ戻ってよいとは限りません。
地震後の建物には、建物自体の損傷だけでなく、落下物、ガス漏れ、電気設備の損傷、火災など、外からは分からない危険が残っている可能性があります。
また、最初の地震で耐えた設備や家具でも、その後の余震によって倒れたり落下したりする場合があります。
商業施設などで一度避難した場合は、施設管理者や消防などによる安全確認が行われ、再入場の案内が出るまで戻らないようにしましょう。
自宅でも、建物に重大な損傷やガス臭、煙などの異常がある場合は、自己判断で入らないことが重要です。
財布や荷物を取りに戻る数分より、安全な場所で待つことの方がはるかに重要です。
一度避難するという判断をしたのであれば、その安全を自分から手放さないようにしましょう。




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