車が水没したらどうなる?避難の判断基準

夏の防災

大雨や河川の氾濫で道路が冠水したとき、「車なら水の中を通り抜けられる」と考えるのは危険です。

冠水した道路では水深や路面の状態が見えず、側溝、段差、開いたマンホール、流された物などが隠れている可能性があります。

車内へ水が入り始めると、エンジンやモーターが停止する、パワーウインドウが動かなくなる、ドアが水圧で開かなくなるなど、短時間で脱出が難しい状態になることがあります。

この記事では、車が水没すると何が起こるのか、冠水路へ入ってはいけない理由、車を降りる判断基準、水没した車からの脱出手順、水が引いた後の対応を解説します。

この記事でわかること

  • 車が水没すると起こること
  • 冠水路へ進入してはいけない理由
  • 車内から避難する判断基準
  • ドアや窓が開かない場合の脱出方法
  • 緊急脱出用ハンマーの使い方
  • 水没した車を再始動してはいけない理由

車が水没するとどうなる?

車は多数の電気装置によって制御されており、一般的な乗用車は深い水の中を走行するようには設計されていません。

車体の下部や床面付近まで水位が上がると、次のような問題が発生する可能性があります。

  • 吸気口から水を吸い込み、エンジンが停止する
  • モーターや高電圧装置を含む電気系統に異常が起こる
  • パワーウインドウや電動ドアが動かなくなる
  • 車内へ水が入り、床や座席が浸水する
  • タイヤの接地力が失われ、車体が流される
  • 水圧によってドアを開けにくくなる
  • 濁った水で道路の端や障害物が見えなくなる

水深が浅く見えても、走行すると車体の前方に波が発生します。その水を吸気口から取り込むと、エンジンが急停止したり、内部が損傷したりする場合があります。

車高の低い車は床面や吸気口が水に近いため、比較的浅い冠水でも影響を受ける可能性があります。

エンジンやモーターが停止する

エンジン車では、吸気口から水を吸い込むと燃焼室へ水が入り、エンジンが停止することがあります。

ハイブリッド車や電気自動車も、冠水路を安全に走行できる車ではありません。水没によって制御装置や電気系統が損傷し、警告表示、走行不能、後から発生する故障などにつながる可能性があります。

駆動方式にかかわらず、冠水した道路へ進入しないことが基本です。

ドアが水圧で開かなくなる

車外の水位が上がると、外側からドアへ水圧がかかります。

水がドアの下端付近まで達すると、普段よりドアが重くなり、さらに水位が上がると、大人でも内側から開けることが難しくなります。

「まだ車内に水が入っていないから安全」とは限りません。車内へ水が入る前ほど車内外の水位差が大きく、ドアに強い水圧がかかることがあります。

車体が浮いて流される

水位が上昇すると、タイヤの接地力が失われ、車体が浮いたり横へ流されたりする可能性があります。

水に流れがある場合は、静かな水たまりよりも危険です。川のような流れになった道路では、水深が比較的浅く見えても車体が移動することがあります。

一度流されると、電柱、ガードレール、建物、ほかの車両へ衝突したり、川や水路へ転落したりする危険があります。

冠水した道路へ入ってはいけない理由

冠水路を見た目だけで安全と判断することはできません。

  • 水深が分からない
  • 道路のくぼみで急に深くなる
  • アンダーパスでは短時間で水位が上がる
  • 側溝やマンホールが見えない
  • 道路と川や水路の境界が分からない
  • 対向車が作る波で水位が一時的に上がる
  • 走行中にエンジンやモーターが停止する可能性がある

前の車が通過したからといって、自分の車も通れるとは限りません。車高、吸気口の位置、車体形状、走行速度などによって影響が異なります。

冠水路の水深が分からない場合は進入しないでください。車を守るためではなく、乗員の命を守るために引き返す判断が必要です。

アンダーパスは特に危険

鉄道や道路の下を通るアンダーパスは、周囲より低いため雨水が集中しやすい場所です。

入口では浅く見えても、中央部だけ急に深くなっている場合があります。また、短時間の豪雨で急速に水位が上がる可能性があります。

通行止めの表示、冠水警報、遮断機、回転灯などが作動している場合は、絶対に進入しないでください。

車から避難する判断基準

車が冠水場所で停止した場合は、車内で復旧を待つのではなく、周囲の状況を確認して早めに脱出することが重要です。

次の状態なら早めに車を降りる

  • 車が冠水路で停止した
  • 水位が上昇し続けている
  • 車内の床へ水が入り始めた
  • タイヤ周辺の流れが強くなっている
  • パワーウインドウやドアの動作に異常がある
  • 車体が動く、浮く、傾く感覚がある
  • 川、用水路、アンダーパスの近くにいる
  • 夜間や豪雨で周囲の状況が確認できない

まだドアや窓を開けられる段階であれば、エンジンの再始動やロードサービスへの連絡よりも、乗員の脱出を優先します。

車を失いたくないという気持ちから車内にとどまると、水位上昇によってドアも窓も使えなくなる可能性があります。

水深を数値だけで判断しない

車への影響は、水深だけでなく、流速、車高、路面の傾斜、車種、進入速度によって変わります。

「水深がタイヤの半分以下なら通れる」といった一律の判断は危険です。水深を正確に測れない冠水路には、最初から入らないでください。

車を降りた後も水の中を歩くとは限らない

車から脱出できても、周囲に深い水や強い流れがある場合は、そのまま歩いて移動することが危険なこともあります。

窓から出られる段階で、車の屋根など水面より高い場所へ移動し、周囲の状況に応じて救助を求める方法もあります。

濁った水の中を歩く場合は、道路の端、側溝、マンホール、流れてくる物が見えないことを前提に行動してください。

車が水没し始めたときの脱出手順

車内へ水が入り始めた場合は、慌てず、次の順番で脱出を試みます。

基本手順:シートベルトを外す → 窓を開ける → 子どもや同乗者を外へ出す → 自分も脱出する

1.シートベルトを外す

まずシートベルトを外します。

バックルが故障して外れない場合は、緊急脱出用ハンマーに付属するシートベルトカッターなどを使用します。

脱出用具はトランクやグローブボックスの奥ではなく、運転席から手を伸ばして届く位置へ固定しておきましょう。

2.パワーウインドウを開ける

電気系統が動いているうちに、サイドウインドウを開けます。

窓が開いたら、水面より高い窓から外へ出ます。子どもや自力で脱出しにくい同乗者がいる場合は、先に外へ出します。

電気系統はいつ停止するか分かりません。窓が少しでも開く段階で、脱出の準備を始めてください。

3.窓が開かなければ脱出用ハンマーを使う

パワーウインドウが動かない場合は、緊急脱出用ハンマーでサイドガラスを割ります。

ガラスの中央より、四隅に近い部分を狙う方が割りやすいとされています。

フロントガラスは一般に合わせガラスであり、脱出用ハンマーでも貫通させることが困難です。基本的には、割ることのできるサイドガラスやリアガラスを確認します。

注意:車種によってはサイドガラスにも合わせガラスが使われており、一般的な脱出用ハンマーでは割れない場合があります。自分の車のガラス仕様と脱出口を事前に確認してください。

4.窓もドアも開かない場合

窓が開かず、ガラスも割れず、ドアも水圧で開かない場合は、車内へ水が入り、車内外の水位差が小さくなるとドアが開けやすくなることがあります。

その場合は完全に息ができなくなるまで待つのではなく、ドアが開きそうなタイミングに備えます。

  • シートベルトを外しておく
  • ドアの取っ手とロック位置を確認する
  • 大きく息を吸う
  • 足も使ってドアを押す
  • 開いたら一気に車外へ出る

これは、窓からの脱出ができない場合の最終手段です。水位が低いうちに窓やドアから脱出することを最優先にしてください。

子どもや同乗者がいる場合の脱出

同乗者がいる場合は、全員が別々に動くのではなく、脱出する窓と順番を短く伝えます。

一般的には、シートベルトを外した後、子どもや自力で脱出しにくい人を先に窓から外へ出し、最後に運転者が脱出します。

  • チャイルドシートのベルトをすぐ外せるか確認する
  • 子どもを抱えたまま狭い窓を通れるか考えておく
  • 同乗者にも脱出用ハンマーの場所を知らせる
  • 後席からも手の届く脱出用具を検討する
  • ペットはキャリーのままでは窓を通しにくいことを想定する

水害時に初めて操作方法を確認するのではなく、平常時にシートベルト、チャイルドシート、ドアロック、窓の操作を家族で確認しておくことが大切です。

脱出用ハンマーを車内に備える

水没時には、スマートフォン、車の鍵、傘、ヘッドレストなどで窓を割れるとは限りません。

脱出用ハンマーには、ハンマーで叩くタイプと、先端を押し当てるポンチタイプなどがあります。

製品を選ぶときは、次の点を確認しましょう。

  • 自動車用の緊急脱出用品であること
  • シートベルトカッターを備えていること
  • 片手でも操作しやすいこと
  • 車内へ確実に固定できること
  • 運転席から手を伸ばして届くこと
  • 使用期限や点検方法が示されていること

ドアポケットへ置くだけでは、車体が傾いたときに流されたり、衝撃で手の届かない場所へ移動したりする可能性があります。付属ホルダーなどで固定しましょう。

車で避難するか、徒歩で避難するか

大雨の際に車で避難するべきかは、地域の状況、避難開始の時刻、道路冠水、家族の移動能力などによって異なります。

車での早期避難が選択肢になる場合

  • 雨や風が強くなる前である
  • 道路冠水が始まっていない
  • 安全な高台までの経路を確認できている
  • 高齢者や歩行が難しい人がいる
  • 避難先に駐車場所が確保されている
  • 自治体が車での移動を制限していない

車を使用する場合も、川沿い、海岸沿い、地下道、アンダーパス、低い道路を避けます。

車で移動しない方がよい状態

  • すでに道路冠水が始まっている
  • 河川の氾濫が迫っている
  • 夜間で水深や道路状況が分からない
  • 激しい雨で前方が見えない
  • 避難経路にアンダーパスや川沿い道路がある
  • 道路が渋滞している
  • 自治体や警察が車両通行を規制している

避難が遅れた状態で車を使うと、道路上で立ち往生し、かえって危険になる場合があります。車での避難は、危険が迫る前に完了することが前提です。

関連記事:洪水警報が出たら準備すべきこと

駐車中の車を移動させる判断

地下駐車場、川沿い、海岸付近、周囲より低い駐車場に車を置いている場合は、雨が強くなる前に高い場所へ移動することを検討します。

ただし、すでに冠水が始まってから車を守るために駐車場へ戻るのは危険です。

  • 地下駐車場へ様子を見に行かない
  • 冠水した駐車場へ入らない
  • 車の移動より人の避難を優先する
  • 夜間や豪雨時に無理な移動をしない

車両保険の補償内容、駐車場所の標高、過去の冠水履歴などを平常時に確認しておくと、早めに判断しやすくなります。

水没した車は再始動しない

水が引いた後に車が動きそうに見えても、自分でエンジンや電源を入れないでください。

水没した車には、電気系統のショート、エンジン内部への浸水、ブレーキや各種制御装置の異常などが残っている可能性があります。

  • エンジンを始動しない
  • 電気自動車やハイブリッド車のシステムを起動しない
  • 濡れた配線や部品へ触れない
  • 自分でバッテリー端子を外さない
  • ロードサービスや販売店へ連絡する
  • 保険会社へ被害状況を連絡する

浸水直後は動いたとしても、時間がたってから腐食や電気系統の故障が発生する場合があります。専門業者による点検を受けるまで運転しないでください。

被害状況を記録する

安全な場所から、車両と周辺の状況を写真や動画で記録しておくと、保険会社や修理業者への説明に役立ちます。

  • 車両全体
  • 水位の跡
  • 車内への浸水状況
  • 周辺道路や駐車場の状態
  • 警告灯や表示の状態

撮影のために冠水場所へ戻ったり、流れのある水へ近づいたりしないでください。

車の水没に備えるチェックリスト

確認項目 事前に行うこと
脱出用ハンマー 運転席から手の届く位置へ固定する
シートベルトカッター 使い方と刃の位置を確認する
窓ガラス 割れるガラスと合わせガラスの位置を確認する
避難経路 アンダーパス、川沿い、低い道路を避ける
駐車場所 地下、低地、川沿いの浸水リスクを確認する
家族 同乗者の脱出順序と用具の場所を共有する
気象情報 大雨情報と道路規制を出発前に確認する
保険 水害時の車両保険の補償内容を確認する
水没後 再始動せず、ロードサービスへ連絡する

まとめ|車を守るより早く脱出する

冠水した道路では、水深や路面の状態を正確に判断できません。車種ごとの走行可能な水深を当てにせず、冠水路には進入しないことが最も重要です。

車が冠水場所で停止し、水位が上昇している場合は、まだ窓やドアを開けられるうちに脱出します。

シートベルトを外し、パワーウインドウを開け、同乗者を先に外へ出します。窓が開かなければ、手の届く位置に固定した緊急脱出用ハンマーを使用します。

車両が水没した後は、見た目に異常がなくても再始動しないでください。ロードサービス、販売店、整備工場、保険会社へ連絡し、専門家による確認を受けましょう。

車を移動させる判断は、道路冠水が始まる前に行います。すでに危険が迫っている場合は、車両の保全よりも人の避難を優先してください。

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